個人でも打ち上げられる人工衛星を開発しているベンチャー企業「株式会社ワープスペース」さんにログイン!
おーっす!コムとあぼです!
隣でにこやかに謎の箱のようなものを持っている人は誰?!
彼は決して世界の珍しい箱収集家などではありません。(そんな人がいればそれはそれでぜひともお話を伺ってみたいものですが…)
彼は永田晃大さん。
なんと筑波大学発のベンチャー企業「ワープスペース」さんで取締役CTOを務める、現役の筑波大学院生です。
…もし、この時点であることにお気づきの方は相当な宇宙好きです。
というのも、先ほどの箱。これなんと
人工衛星なんです。
オーディエンス「えぇーーーー!?人工衛星ーーー?!」
正直、宇宙とか人工衛星とかそういった類の技術に関して、
ロケットとかスペースシャトルとか種子島とか、テレビで見たことある程度の知識しかなく、
自分も「これ人工衛星なんです」って言われてもはじめは信じられませんでした。
これがコムの持つ「人工衛星」のイメージ。
かなり大きくて、立方体というよりはサイドに太陽電池が羽のようについていたり、巨大なパラボラアンテナがついていて、
GPSとか電波とかそういうやつを地球規模でうまいことやってくれるスゴイヤツ!って認識でした。
それが
こんなに小さな箱みたいなのが、人工衛星って言われてもとても信じられません。
ということで、このミニマム人工衛星が本当に人工衛星なのか、永田さんに聞いてみたいと思います。
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つくばセンターからすぐの、
エキスポセンターや筑波大学春日キャンパスの近くにあるこちらの建物の一角にワープスペースさんはあります。
事務所内に入ると、そこにはザ理系男子な雰囲気が広がっていました。(散らかってるとは言ってない)
あえて言い換えるとするならば、
努力の痕跡がめちゃめちゃ残った、夢と希望に満ちあふれた、散らかっている部屋です。
…それでは早速、お話を伺ってみましょう。
ワープスペースってどんな会社?インタビューしてみた。
永田晃大さん。兵庫県神戸市出身。幼少期に天文マニアの父親からもらった宇宙の本がきっかけで宇宙へ憧れを抱くように。
中学の頃からJAXAがつくばにあることを知っていたほどの宇宙好きで、
高校時代にNASAの火星探査機の着陸シーンを見たことをきっかけに、将来的にも技術者として宇宙に携わる道に進むことを決めた。
先ほどの小型人工衛星を開発する筑波大学のプロジェクト『「結」プロジェクト』の存在を知り、携わりたいという思いから筑波大学に入学。
そこで人工衛星の設計開発に触れ、現在「結」プロジェクトが元になって企業化された会社である「ワープスペース」で取締役を務めながら、人工衛星の設計開発、経営などを手がけている。
地球外生命を発見することが夢で、好きなお笑い芸人は相席スタート。
「こんにちは。今日はよろしくお願いします!」
「よろしくお願いします!」
「さっきの人工衛星、見てもいいですか?」
「どうぞ!」
「これが本当に人工衛星なんですね。小さいけど、結構重いですね。」
「1.4kgほどあります。」
「…人工衛星ってそんなに軽いんですね。もっと鉄の塊みたいなレベルで重いものかと思ってました。」
「今までのモデルだと普通に何トンとか、何十トンとかある人工衛星もありますよ。」
「重っ~~!そんな中1.4kgってめちゃめちゃ軽い…!
あれ…このパーツには筑波大って書いてますけど、基盤かなにかですか?」
「これはアンテナですね。」
「これがアンテナ!?」
「はい、貼るだけのタイプのアンテナです。
この人工衛星の打ち上げプロジェクトで挑戦しているミッションのひとつです。
普通の針金状のアンテナだと、打ち上げの時は格納して、
あとで宇宙空間で開くっていう風にしなければいけないんです。」
「アンテナ=触角みたいに伸びてるもの
って固定概念に完全にとらわれていました。」
「それだと、せっかく打ち上げてもいざ宇宙空間で開かなかったらアンテナが使えない。これは大きなリスクなんです。
でも貼るだけの形なら展開に失敗しないので、
新しいアンテナの形として提案できないかなと思って使っています。」
「宇宙までせっかく打ち上げたのに、アンテナが使えないってなったらめっちゃサガるでしょうね。
それは避けたいリスクなわけですね。」
「ワープスペースでは、そういう新しいタイプのパーツなどが実際に宇宙で機能するということを実証実験しているわけです。」
「そういえばさっき、ミッションって言ってましたよね。
他にはどんなミッションがあるのですか?」
「パーツに限らず新しい技術を積極的に人工衛星に取り入れて、それが宇宙で動くってことを実証していく。
そしてどんどん宇宙の技術を地上に近づけて高機能にしていこう、というミッションがあります。」
「えっ、宇宙の技術を地上に近づける…?
宇宙の技術って地上で最先端の技術じゃないのですか?」
「実は、人工衛星に使われるコンピューターって平気で10年20年前の技術が使われるんですよ。
なぜかというと、古いもので昔からよく使われているものの方が宇宙で動く信頼があるので、
新しいものはなかなか使わないんですよ。」
「地上で最先端の宇宙技術でも、宇宙で使われている技術自体は最先端とはうらはらに離れているんですね。」
「そうなんですよ。
しかも昔のコンピューターを搭載すると人工衛星がすごく大きくなっちゃうし、そんなに高機能にできないっていう問題もあるんです。
でもそれだといつまでたっても遅れるじゃないですか、宇宙の技術が。」
「そこで地上で現在使われているコンピューターを宇宙でも使うことが出来た、っていう実績を積み上げていくわけですね。
これがその小さな人工衛星に課せられたミッション…見た目からは想像がつかないほど大きいものを背負ってますね。」
「そうです。そして新しいコンピューターが搭載できるとなれば、
人工衛星のサイズもかなり小型なものになっていきます。」
「小型にするとどのような点でメリットが生まれるのでしょうか?」
「小型でちっちゃくなると、その分一機にかかる部品代が安くなります。」
「安いって、素晴らしい。」
「ここでもう一つ重要なミッションがありまして、”「結」ネットワークの構築”というメインミッションがあるんです。
人工衛星って一般的に堅苦しいイメージがあると思うんですけど、それを崩そう!っていう試みのことなんです。」
「確かにまったく宇宙に詳しくない自分としては、メカメカしていてとっつきにくいというか。
すごく難しそうな分野だなって思ってました。そして今も思ってます。」
「そんな人でも、本当に研究機関とか大学とかに限らず誰でも、
アンテナをかざすと宇宙からメッセージとかいろんな信号を受信できて、
それをキャッチできた人たちがネットで『受信できたよ』って報告しあうコミュニティをつくろう!という試みを行っています。
それが“「結」ネットワークの構築“です。」
「人工衛星から○○が届いたよ!ってなんか楽しそう!」
「例えばどんなメッセージが来るんですか?」
「いろいろありますよ。「受信してくれてありがとう」とか。
世界の様々な場所から送られたメッセージが実際に衛星から届いたりも。
あと画像データなども出来ます。」
「何語か読めない、みたいなこともあるのかな。(笑)
どんなことに使われているんですか?」
「今だと地球観測とか、農作物の収穫時期を見たり、
あとはGPSやネットなど、いろいろあります!」
「(うなずくキリン)」
「ただ僕らはそれだけじゃなく、エンタメ系にもどんどん使えるんじゃないかなと思って、開拓しているところです。
例えばこの人工衛星に360°カメラを搭載すると、宇宙空間が360°見えるわけですよね。
それを今流行りのVR(Virtual Reality)と組み合わせると…」
「超たのしそ~~~~!!!」
「宇宙の景色に囲まれながら宇宙遊泳できたりとか」
「超たのしそ~~~~!!!」
「あとはロボットとか宇宙船とかの形をした人工衛星を飛ばして、
宇宙ドローンみたいな感じで宇宙でレースさせたりとか。」
「超たのしそ~~~~!!!」
「ね、ワクワクするでしょ!」
「低予算で打ち上げて、宇宙を遊び場に」
いつか、お歳暮にハムではなく人工衛星を打ち上げるような日が来るかもしれません。
想像以上に宇宙はカジュアルな存在になってきているのです。
しかし、気になるのはこの人工衛星のお値段。
搭載されているソーラーパネルはなんと1枚で5万円もするという。
それが8枚ついているので、それだけでもう40万円。
さらに人工衛星内の無線機と、そのコントローラーなどで50~60万くらい。
他にも諸々込めると、小さな人工衛星は一つ100万ほど。
そして開発費も含めると、人件費なしで300万円もかかってしまうという。
これでは全く気軽に打ち上げられない。みんな今までどおり、ハムを贈るだろう。
そこでつくばで太陽電池を取り扱う会社とも連携したり、
自分たちでこの写真のような基盤を設計するなど、
様々な策を講じ、極限までコストを抑えることによって、
ワープスペースさんではなんと
人工衛星製作1機50万円、打ち上げ50万円で今年の4月~5月から製品をどんどん出していこうと奮闘中だとのことです。
これは安い!!
コンビニでパッと打ち上げられるような未来への第一歩ですね。
…さて、せっかくワークスペースのことや人工衛星のこと、宇宙のことについて色々教えてもらったので、
ついでに実際にどんな感じで研究が行われているのかも見せていただくことに。
研究所にログイン!
ここが研究所。
筑波大学で行われている「結」プロジェクトの研究所は、
第3学群エリアからループ(筑波大学の周りを囲んでいる道路の呼称)を挟んで西側付近にある、工学系学系H棟。
中へと案内していもらいます。
別に怪しい粉の売買に来ているわけではありません。
中にはこんなイカツイマシーンが。
これは地震のような振動を起こすマシーンで、開発された人工衛星の強度を試す装置です。
ここにある巨大な設備は、JAXAから譲り受けるものもあるとか。
これも幸運にもJAXAからいただけたというマシーン。普通にJAXAのロゴが書いてあります。
内部を冷却し、宇宙空間のような過酷な環境に人工衛星が耐えられるのかをテストしているそうです。
つくばに宇宙研究が盛んなのは、身近に日本の宇宙航空研究開発機構が存在するからなのかもしれません。
研究室にログイン!
お次は、もう一つの研究室へ。
さっきの研究所では、大型の設備を使って人工衛星の耐久テストを行っていますが、
こっちでは飛んでいる人工衛星の管理などを行っているそう。
この総合研究棟Bの最上階で人工衛星の電波を受信したり、
データの分析を行っていたりしているとのこと。
研究室に入ると、こんな張り紙が。
なぜか人工衛星の研究というより、武道らしい言葉が並んでいます。
とんこつラーメンの張り紙は気になりますが、ツッコミ待ち感が見え隠れしているのであえて触れないでおきます。
ここで通信を行っているとのこと。
実際に人工衛星からデータを受信するのって、すごくドキドキします。
人工衛星が今どこを飛んでいるのか、どういう軌道で飛んでいるのかは、
この画面で一発でわかります。
「今朝あの辺りを飛んで、あっちの方に行ったよ~」
なんて、人工衛星が本当に身近に感じられます。
「結」プロジェクトのマスコットキャラクターがじわじわ来る…!
・・・
「この子なんですか?かわいいですか?」
「ゆいぬです。かわいいです。」
このキャラクターは、「結」プロジェクトのマスコットキャラクターである「ゆいぬ」。
人工衛星の形をした頭部を持つ、犬です。
「なんか尻尾、針金を刺しただけのように見えますけど?しかもガムテープですよねこれ?」
「そんなことありません。しかもかわいいです。」
「あと何か犬というよりアザラシみたいでは?後ろ足ベターってしてるし、身体も青いし。」
「完全に犬です。そしてすごくかわいいです。」
人工衛星のことに関してはあんなに理路整然と分かりやすく説明してくれた永田さん。
なぜかゆいぬのことになると、意固地になっているように見えますが、
きっとそれだけ長い付き合いなのでしょう。愛着がすさまじいです。
結局なんかジワジワ来てちょっとかわいく思えてきました。
つくばで人工衛星がカジュアルにあがるようになったとき、きっとゆいぬも町に大量に放出されることでしょう。
みなさんもぜひ人工衛星をあげて、その未来へと一役買ってみてはいかがでしょうか。
自分らもいつか、勝手につくばサテライトを打ち上げて、全世界につくばの魅力をばらまきたいと思います。
それではまたジカイ!
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